虚血性心疾患は肝機能の低下をもたらす
狭心症などの虚血性心疾患の怖い所は、他の内臓も悪くさせるところです。
心臓からの血流量が低下すると、普段の血流量が多い内臓ほどダメージを受けます。
今回は肝臓と心臓の関係について書いています。
肝臓と心臓の関係
肝臓は下の方から門脈と呼ばれる静脈と、肝動脈という2つの大きな血管が入ってきます。
門脈からは、腸や脾臓を循環して豊富に取り込んだ栄養分が送られてきます。
肝動脈からは、大動脈から豊富な酸素を含んだ血液が送られます。
肝臓の中には、全血液量の70%は門脈から送られ多くの栄養素を含みますが酸素は少ないのが特徴です。
残りの30%が肝動脈から送られ必要とする酸素の半分を含みます。
そのため、心臓から酸素を含んだ血液を送る肝動脈は、肝機能を維持するうえで極めて重要です。
肝機能が低下する原因
肝臓は必要とする酸素と栄養素を次の2つの太い血管から得ています。
仮に片方の血管に損傷を受けても、もう一方から酸素と栄養を得られるので肝臓は機能を維持することができます。
肝臓に入った血液は肝静脈を通って出ていきますが、その血液は門脈からの血液と肝動脈からの血液が混じり合ったものです。
肝静脈の血液は下大静脈に流れ、腹部と下半身から上がってきた血液とともに心臓に流れ込みます。
肝臓の血管の病気は血流の不足が原因で起こります。
血液が肝臓に溜まって、肝静脈などの大きな血管にうっ血を引き起こせば肝臓は腫れあがります。
肝臓に出入りする血流の不足は、心不全や血液が凝固しやすくなる病気などが原因です。
急性心不全の時の肝障害は一時的なもので、心不全が改善すると肝障害も改善します。
心不全が一時的であれば、肝障害はすぐに回復します。
しかし、慢性的に心不全が続くと肝障害も悪化します。
さらに肝臓の中の毛細血管の血流が滞ると、肝臓の細胞に損傷が生じます。
この場合もうっ血により、肝臓は腫れて大きくなります。
肝臓のうっ血により、門脈の血圧も上昇し門脈圧亢進症と呼ばれる状態になります。
門脈圧亢進症になると、
- 食道静脈瘤
- 腹水
- 脾臓の腫大
などが起こります。
肝臓の損傷が何度も起こると、最終的には重度の瘢痕が残り肝硬変が起こります。
肝臓の毛細血管が詰まる原因としては、免疫抑制剤などの肝臓に毒性作用を及ぼす薬剤の使用が挙げられます。
そのため、リウマチなどで免疫抑制剤を多用している人は肝臓の毛細血管が詰まりやすくなります。
心臓にも肝臓にも良い生活習慣
肝臓にも心臓にも優しい生活は、過労と睡眠不足を避ける事です。
特に肝臓は身体を動かす酵素の大半を作っているので、過労で徐々に弱ります。
肝臓の弱りは、血流を悪化させ心臓の負担となります。
また、肝臓が唯一休めるのは睡眠時だけなので、睡眠不足が堪えます。
心臓も同様で、睡眠不足や過労は自律神経を乱して、心臓の正常な拍動を妨げます。
そのため、過労と睡眠不足が重なっている人に虚血性心疾患は起こりやすくなります。
また、お酒の飲み過ぎが肝臓の負担となるのは有名です。
加えて、お酒による脱水状態が血流を悪化させ、心臓にも肝臓にも大きな負担となります。
そのため、虚血性心疾患のある人は特にお酒の飲み過ぎや睡眠不足にならないように気をつけましょう。
虚血性心疾患は軽くても他の内臓が危険の場合も!
内臓の中でも、肝臓は血流不足の影響を受けやすい臓器です。
そのため虚血性心疾患の症状は軽くても、慢性的に心不全の状態が続くと肝臓の機能も低下します。
肝硬変まで進めば、心疾患よりも死亡率は高くなるので注意が必要です。